私がシナリオを準備しない理由をお話します

Infinity 笹木純子です。私はウエディングパーティ、イベント、式典など、ほとんどの現場仕事において、シナリオを一言一句準備していくということをしていません。それをとても不安がられるクライアントさんもいらっしゃいます。でも、シナリオを準備しないのは、単なる手抜きというわけではなく。長年の経験から、シナリオを書かないことで生まれる利点があることを知ったからにほかなりません。

その理由の土台にあるのは、「ウエディングもイベントも、予定調和は楽しくない」という私の考えによるものです。

そのときの会場の空気というのは、司会者が創るものではありません。
結婚式、パーティー、式典、イベント
その場がどんな場所であれ、その空間に集った人によって彩られる。
そのとき、その場に居合わせた人の掛け算によって創られると考えています。

司会者としての役割。それは、当日までの下準備に関わってきたすべてのヒトの想いを受け止めること。
主催者(ウエディングの場合はカップルさん)は、どんな想いで。どんな目的があって、その日のそのイベント(結婚式・ウエディングパーティー)を行うのか。
スタッフは、そんな主催者の想いをどうやってカタチにしようと思ったのか。
その過程を想像し、しっかり受け止めること。それが司会者として、まずやるべきことだと考えます。

同じ空間を彩るすべての人が、イベントの主催者や新郎新婦と一緒に、ここで、同じときを過ごしていることをいつまでも楽しんでいたいと思ってもらえるように。ただ、そのことだけを考えます。

想いと準備の過程をしっかりと受け止めておけば、あとはそこさえブレなければいい。
核心の部分をブラさないことは大切に。そのうえで、そのとき、その場で起きたことを、旬な素材としてすぐに拾いあげて活かしていく。まるで、生産地のすぐ隣で即興で料理するシェフのように。

一言一句、台本を作っておけば失敗はしない。だから、事故なく終えることができる点ではとても安全です。けれど、それ以上のアップデートは期待できないのです。

一瞬、一瞬で表情が変わるのが「場」です。そこに集う人、流れる音楽、装飾、天気 etc. 全く同じ進行なはずなのに、素材が変われば確実に空気は変わるし、調理方法が変われば、味わいも変わる。だから私は、一瞬一瞬の変化を敏感にキャッチして、言葉を紡いでゆきたいです。

その日だけ見ればたったの数時間にすぎないけれど、その数時間のために、どれだけたくさんの人が時間と知恵を注いできただろうか。ウエディングを思えば、当日現場に姿を見せるクリエイターやサービススタッフだけでなく、ふたりのイメージを体現するコーディネートを考えて、お花を仕入れて、花瓶に投げ入れながら最終調整までするフローリストもいる。もっと突き詰めれば、フローリストが手にする花を育てる生産者だってチームの一員。ほんのわずかな数時間に関わった数えきれない幾多の人たちの下準備があってこその当日。

イベント会社や結婚式場は、そうした素材を活かしながら、どうすればそこに集う人がよりその数時間を楽しめるのか。「場」を想像しながら仕掛けづくる。

私たち司会者は、それをアップデートするきっかけづくりをする役割だと考えます。仕掛けがあっても、それに気づかなければ何も起きない。なんの価値も生まれない。当日、マイクを持って一斉に呼びかけることを許された私たちだからできること。それは、準備された仕掛けに、集った人を巻き込むきっかけを創ること。 

司会者は決して主役ではありません。仕掛けに巻き込むきっかけづくりこそが司会者の役目だと、Infinityは考えます。

なお、どんな時もシナリオを作成しないってわけではありません。こんなときには作成するよ、という場合もあります。それがどんなとき?っていうことについては、また別の機会にお話します。

投稿日: